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激しさと、静けさと、心強さと

 

 

高齢者を相手にヨガを教えている方がこんな話をしてくれた。

「リラックスしてくださいって皆さんに言うと、 

『リラックスってどうすればできるんですか?』って聞かれて困ってしまうことがあります」

「へえー、それは面白いですね。なんて答えるんですか?」

「とりあえず軽く口を開けてみてくださいって答えます」

 

リラックスという言葉はヨガでは良く使われる言葉だけれど、

日本で使われるようになったのは最近のことかもしれない。

「力を抜いてください」「くつろいでください」という表現が近いだろうか。

 

では、力を抜いたり、くつろぐためにはどうすればよいだろうか。

それは、誰かに教わることではなく、自然に起こることだと思う。

 

一生懸命働いてから、家でお風呂に入ればくつろげる。

子育てをされている方は、子供を誰かに預けたら、くつろげる。

接客業をされている方は、お客様が帰ったら、くつろげる。

 

しかし、ヨガ教室で「一旦、力をいれましょう」と言っても仕方がない。

「仕事帰りに来て下さい」と条件をつけるわけにもいかない。

心身共に力を入れるにはどうすればよいだろうか。

 

シャクティ・ヨガ・サーダナは武術を行う。

全身に意識を集中させなくては、武術の型は演舞できない。

正拳突き一つでも、足腰から指先まで、瞬時に力を入れる必要がある。

特にヌンチャクを振る時は、心身共に力を漲らせ、意識を集中させる。

 

上達すれば無駄な力は抜けるが、余計な考えごとはしない。

全身の感覚を研ぎ澄まし、ヌンチャクの理に即して動く。

「考えるのではない、感じるのだ」というブルース・リーの教えを体験できる。

武術を行ってからアーサナを行えば、自然と全身の力が抜ける。

 

激しく動いた後だからこそ、深く味わえる静けさを体験できる。

激しさと静けさの両極を体験することが、リラックスを深めることにも繋がる。

ヨガとは、心の様々な側面で両極を体験し、バランスを体得する道でもある。

 

心が激しさと静けさの両極を忘れると、活動のバランスが取りにくくなる。

激しく動くべきか、静かに落ち着くべきかが分からなくなり、

「あれも、これも、やらなければならない」と切羽詰ってしまったり、

「やりたいことがみつからない」という無気力に陥ってしまったりする。

 

激しく動き続ければ、心は自然に静けさを求める。

静かに座り続ければ、心は自然に動きだす。

僕はヨガと武術を通じて、その感覚を心に刻んできた。

 

昼も夜も、晴れも曇りも、夏も冬も、それぞれに役割がある。

自分の心の位置を知り、バランスを体得すれば、心強く生きて行ける。

 

充実した一日を過せば、深い眠りを迎えられる。

充実した平日を過せば、安らかな休日を迎えられる。

充実した人生を過せば、幸せな死を迎えられる。

きっと、ごく自然に、それはできる。

 

心の両極を体験し、心強く生きてゆくために

ヨギは武道と出会う

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