誰とも競わず

ヨガのワークショップに参加すると、初心者の方とこのような会話になることがある。
「私は体が硬くて、全然ポーズができないんです、ごめんなさい」
「そうですか、なんで僕に謝るんですか?」
「だって、皆さんの足を引っ張るかなと思って」
「それぞれ自分の体を動かすんですから、関係ないでしょう」
「はあ・・、とりあえず、あまりできないですけど、よろしくお願いします」
初めてこのような会話をしたとき、とても驚いたのを覚えている。
でも、ワークショップ巡りをする内に、こんな風に考える人は少数ではないと気がついた。
僕は先生の手本を見て、体をその通り動かすことしか考えたことが無かった。
それは絵や字を書いていることに近くて、少なくとも実習中は他の人を見ていない。
待機しているときだけ、他の生徒の動きと先生の指導内容を参考にしていた。
武術で手合わせをする場合は、相手に応じて手加減をする必要があるだろう。
音楽を共に奏でるなら、リズムや音程を狂わせて相手の足を引っ張ることもあるだろう。
でもヨガは一人で行うものだ。
だれでも最初は、体が心地よくなることが大切だったはず。
いつの間にか、自分の体を忘れ、それ以外のことに気を取られるのはもったいないと思う。
体を完成させるためにポーズがあるのであって、
ポーズを完成させるために体があるわけではない。
背の高い人、低い人、太った人、痩せた人、様々な体型に応じた様々な形が生まれる。
それぞれが効果を実感できれば良いのであって、特定の形にこだわらなくても良いと思う。
互いに切磋琢磨すれば頑張れる事もあるかもしれないけれど、そのやる気は続きにくい。
必要なポーズが違ったり、体が固くなったり、相手がヨガを辞めたりするから。
本当に続くやる気は、自分の可能性が開かれる喜びの中にこそあると思う。
自分の可能性が無限に広がる、これほど楽しいことは無い。
そして、他の誰とも違う、自分の可能性を見つけたとき、自然に比較をしなくなる。
誰とも競わず、僕はヨガを続けたい。