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宇宙法則を体現する

 

 

少年サンデーコミックスの「拳児」9巻、第7話「地球の力」で

主人公の兄弟子が中国武術を学ぶ理由についてこう述べている。

「人間性を高めて宇宙と一体になるためだ。

 最高の拳法は、その動作の中に宇宙の法則を表している

 つまり、正しく体得することは、宇宙と一体になることだ。」

 

「拳児」の登場人物は実在の人物を元に描かれていることもある。

実際に、主人公の師匠が伝える八極拳の型の演武を動画で見ることもできる。

それは、確かに美しく、力強く、かっこ良かった。

 

「拳児」には武道に大切な心構えがたくさん描かれている。

そして、宇宙の法則についても、いくつかヒントが描かれている。

その一つが「地球の力」であり、重力を活かす方法である。

 

重力は地球の中心に向かって働く求心力から生まれる。

逆に中心から離れると遠心力として働く。

 

地面に横たわる状態が、重力に体を預けた状態だ。

そこから筋力を利用して重力から離れ、座り、立ち、歩く。

座り、立つときは、重力に対して姿勢を保つための筋力が働く。

歩くときは、重力に対して足や腕を持ち上げるための筋力が働く。

動作の多くが、地球の重力に基づき、どう遠心力を働かせるかで決まる。

 

武術の動作は、重力と全身の力を用いて行う。

手でパンチして、足でキックするという単純なものではない。

足から腰へ、腰から体幹へ、体幹から腕へ、一瞬で遠心力を働かせて動く。

 

そこで、武術を始める際は、まず立ち方を練習する。

太ももやふくらはぎの筋肉を鍛えるためだけではない。

あらゆる動きの中でバランスを保つ力、足裏に重力を感じとる力、

足裏から遠心力を働かせ、全身に伝えてゆく力を身につける。

 

「拳児」の主人公は、幼い頃から八極拳の型と立ち方の練習を始める。

8年の修行を経て、師匠への弟子入りが許される。

そこで初めて、「心」「意」「気」「力」を一致させ、気を集中させる方法を学ぶ。

 

ヨガもまたアーサナで全身を調整する練習から始まる。

体を様々な形で重力に預け、あるいは反発して鍛える。

アーサナは「形」や「姿」を意味し、僕の先生は「座法」とも訳した。

長時間、安定した形で座れるようになるまで上達する必要がある。

 

特に、結跏趺坐という座法が大切である。

普段は地面に向かう足裏を上に向けることで、足の気を開放する。

足から腰へ、腰から体幹へ、体幹から腕へと気を通しやすい座法でもある。

背骨を垂直に立てることで、瞑想中に最も重力を感じない座法でもある

 

安定した座法ができるようになり、体が錬りあがってゆくと、

呼吸法と共に全身に気が流れ、集中させることができるようになる。

どんな高度な技術も、すべては基礎の延長線上にある。

技術を深めるほどに、技術の奥深さと、シンプルな美しさが分かる。

 

武術は立ち方から始まり、型を練り上げ、気を集中させる。

ヨガはアーサナから始まり、呼吸法を練り上げ、気を集中させる。

気を外側に向けるか、内側に向けるかの違いはあるけど、原理は近いと思う。

 

宇宙法則というと、何か身近ではない特別なことのように聞えるけれど、

誰もが宇宙の中で生きているのだから、常に宇宙法則の中にいる。

ただ、それを全身で感じているかどうかが人によって違う。

 

誰もが重力の中で生きているが、武術の型が全身でそれを教えてくれる。

誰もが呼吸をして生きているが、ヨガの呼吸法が全身でそれを教えてくれる。

そして、全てが宇宙法則と共にあるという、当たり前なことに気づく。

 

宇宙法則は、天地の理であり、生命の理である。

宇宙法則は、人類が地球に誕生する以前からあり、滅亡してもずっとある。

人の世に、様々な法律や戒律が生まれては消えてゆくけれど、

人が最後に立ち返るのは宇宙法則である。

 

「拳児」10巻、第7話で、拳児の師匠はこう話している。

「学ぶのには、上達と下達がある。

 上達とは、小技にとらわれずに物事の根本を理解すること。

 下達とは、小手先の技ばかり集めることに執着して、根本を理解しないことだ。

 根本を掴むんだ、拳児。」

 

ヨガも武道も、あらゆる技術は根本へと繋がってゆく。

そして、根本からあらゆる技術が展開してゆく。

僕はどこまでも、根本への道のりを歩んでゆきたい。

 

ヨギは武道と出会う

上達した先に、あらゆる道が一つに繋がる

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