赤子のように、わがままに

親に抱かれた赤子を見ると、大切なことを思い出す。
眠っていても、起きていても、その自然な姿に胸が温かくなり、その子が元気に育って欲しいと思う。
そして、そんな気持ちで自分を見つめてくれた、たくさんの人達を思い出し、自分を大切にしようと思う。
お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟、学校の先生など、たくさんの人に見守られながら、いっぱい泣いて、いっぱい迷惑をかけて育ってきた。
この子がどんな大人になるか、期待されながら、心配されながら、いつも必要な言葉が与えられてきた。
今はもう体が成長して、自立して生きているけれど、縁のある方々にお世話になっていることに変わりは無い。
職場で仕事をさせていただき、お金をいただき、生活に必要なものと交換させていただいて生きている。
出会いと別れを繰り返し、自分も変わっていくけれど、大切なことは変わらない。
大人になると、笑顔で赤子を抱くように、気持ちを伝え合うことはしなくなる。
たくさんの事について話しあい、大切な言葉が後回しになる。
それでも、別れ際に交わされる言葉「お元気で」「ありがとう」が、一番大切な想いだ。
生まれてから死ぬまでずっと続く、互いを大切に思う気持ちこそが、人間が生きる力の源だと思う。
赤子がお腹をすかせて泣いたら、乳を飲ませ、排便をして泣いたら、オムツを取り替える。
子育てをする動物の中で、人間が最も他人の世話を必要とし、大人になっても他人と協力して生きていく。
僕の祖母は、赤子の僕が泣いたら、すぐに抱き上げたと何度も話してくれた。
「そしたらね、すぐに泣き止むのよ、抱き癖をつけたら良くないって言われるけど、それで良かったんだよね」
祖母が僕につけた癖は、他人に依存する弱さではなく、他人を大切に想う力だと、証明して生きていたい。
赤子だった自分を放置し続ければ、誰もが既に死んでいるのだから、誰かが自分を抱いてくれた。
元気に育って欲しいという想いを込めて、育てられた。
たくさんの人に与えられた、想いが力になり、今を生きている。
だから今、心や体の調子が悪いのなら、自分を抱いて育ててくれた人の代わりに、自分で自分を守ろう。
心身が健康で、幸せに満ちていなければ、心の深いところでは赤子のように泣いているはずだから。
赤子と違って、大人は調子が悪くても、相手に心配をかけないようにする。
でももっと大切なことは調子を整えて、心から幸せに笑うことだ。
そうすれば、相手も心配せずに、心から幸せになることができる。
自分を育ててくれた人達へ、感謝の気持ちを忘れずに。
赤子のように、わがままに、僕はヨガを続けたい。